交通事故で下肢機能障害と診断されたら、どのように治療を行っていくことになるのでしょうか?またそれによって認められる賠償金はどのように算定されるのでしょうか?
下肢機能障害の特徴
下肢機能障害とは関節機能障害ともいい、下肢の3大関節である「股関節・ひざ・足首」や「足指」の関節に障害を負った状態のことをいいます。動作が制限されたり、完全に機能しなくなると後遺障害等級が認定されます。
下肢機能障害と判断される状態
- 下肢の用を全廃したもの
- 関節の用を廃したもの
- 関節の機能に著しい機能を廃したもの
- 関節の機能に障害を残すもの
これらの状態が見られると下肢機能障害と判断されます。また、上から後遺障害等級の高い順に並べています。
下肢の用を全廃したもの
下肢の機能を完全に廃したものとは、下肢3大関節の機能が完全に失われた状態のことをいいます。簡単に言うと足が全く動かず、行動範囲が制限されてしまうことです。また、足指全部が強直した場合も含まれます。「両下肢の用を全廃したもの(1級6号)」「1下肢の用を全廃したもの(5級7号)」が認定されます。
関節の用を廃したもの
以下の3つに当てはまるものを「関節の用を廃したもの」とします。
- 関節が強直したもの
- 関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの
- 人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの
強直とは、完全に強直しているまたは、関節可動域角度の10%程度以下に制限されているものをいいます。「1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの(6級7号)」「1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの(8級7号)」が認定されます。
関節の機能に著しい機能を廃したもの
以下の2つに当てはまるものを「関節の機能に著しい機能を廃したもの」とします。
- 健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの
- 人工関節、人工骨頭を挿入置換した関節のうち、「関節の用を廃したもの」以外のもの
人工関節、人工骨頭を挿入置換は、関節可動域が1/2以下の場合「8級7号」の等級が認められますが、挿入置換して可動域が1/2となることはありませんので、関節可動域が1/2を超える場合の「10級11号」と認定されることが殆どです。
関節の機能に障害を残すもの
「関節の機能に障害を残すもの」とは、可動域角度の3/4以下に制限されているものをいいます。「1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの(12級7号)」が認定されます。
下肢機能障害の等級表
等級 | 状態 |
---|---|
1級6号 | 両下肢の用を全廃したもの |
5級7号 | 1下肢の用を全廃したも |
6級7号 | 1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの |
8級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
下肢機能障害の治療
下肢機能障害の治療は症状によって異なりますが、リハビリテーションや薬物治療、サポーターによる装具治療の他に手術による治療が挙げられます。手術で一般的に用いられるのが「人口関節置換手術」で、セラミックやプラスチック、または金属を人工関節として挿入置換するものです。本来の関節の機能を取り戻すために行います。比較的軽い症状ですと、リハビリテーションでの治療となります。
下肢機能障害の後遺障害等級を得るために
下肢機能障害は、レントゲンやMRIの画像で損傷が確認できることが多い為、事故直後に撮影し画像を残しておくことが大切です。また、これらで立証できない場合もありますので、自覚症状も医師にしっかりと伝えましょう。事故から時間が経過していると、事故との因果関係が疑われて等級を獲得しずらくなりますので、自覚症状がある場合は早めに証拠を残すように心がけましょう。
下肢機能障害の示談交渉
下肢機能障害で等級が認められると、賠償金に「逸失利益」と「後遺障害慰謝料」が追加されます。等級によって異なりますが、賠償金総額が数千万円を超えるケースも珍しくありません。等級が高い場合は、弁護士に相談して裁判・弁護士基準で示談交渉を代行してもらいましょう。弁護士に依頼することで最終的に得られる利益が2〜3倍上がることも珍しくありません。