交通事故で高次脳機能障害と診断されたら、どのような治療を行っていくことになるのでしょうか?またそれによって認められる賠償金はどのように算定されるのでしょうか?
高次脳機能障害の特徴
高次脳機能障害は事故の怪我(脳外傷など)によって脳に負傷を追うことで、認知機能(知覚、記憶、学習、思考など)に障害が起きた状態のことを言います。高次脳機能障害になると、具体的に以下の症状が現れます。
病名 | 症状 |
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記憶障害 | いつもだったら覚えていることもすぐに忘れてしまうといった、記憶力が欠けてしまう状態 人の名前が覚えられない 今日の日付が分からなくる 今いる場所が分かららなくなる |
注意障害 | 注意力が散漫で、必要なものに意識を向けることができなくなる状態 ぼーっとしてミスを繰り返す 長時間集中することができない 気が散りやすい 物事に対して関心を示さない |
遂行機能障害 | 論理的に考え、計画したり物事を解決する能力が欠けてしまう状態 自分で計画を立てることができない 問題解決ができない 行き当たりばったりの行動をする |
失行症 | 道具が上手く使えない 簡単なことでも指示されるとできなくなる |
失認症 | 自分が触っているものが何か分からない 人の顔が判別できない 話を聞き取ることができない |
失語症 | 自分の話したいことを言葉にできない 文字の読み書きができない 会話が困難 |
地誌的障害 | よく通っている道なのに迷ってしまう |
多くはMRIやCTを撮影すると障害部を特定することができますが、それでは特定できず、病院や入通院だけでは判断が難しい症状の場合もあります。検査はMRIやCTだけでなく、神経心理学検査が必要になりますので、気になる場合は脳神経外科や神経内科、精神科を受診しましょう。
高次脳機能障害の治療内容と回復期間
高次脳機能障害は、手術や薬の服用といった確立した治療方法がありません。そのため、回復に向けてはリハビリを行う必要があります。高次脳機能障害はリハビリを行うことで、発症後1年で回復が見られます。その後は回復スピードが衰えていき、2年で症状固定すると言われています。
高次脳機能障害の後遺障害等級
後遺障害と認定されうる等級は、1級1号、2級1号、3級3号、5級2号、7級4号、9級10号です。「神経系統の機能又は精神に障害を残すもの」として等級が認められます。後遺障害等級の判断基準として、「MRIやCT画像所見の有無」「事故直後の意識障害の有無」「日常生活の報告書」の3点から判断されます。
高次脳機能障害の等級判断基準
等級 | 判断基準 |
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1級1号 | 重度の神経障害のために、生命維持に必要な身の回り処理の動作について、他人の介護が要するもの(高度の痴呆) |
2級1号 | 高度の神経障害のために、随時介護を要する(判断力低下、情緒不安定、一人で外に出れない) |
3級3号 | 介護を要するほどではないが、終身にわたりおよそ労務につくことができないもの(記憶力、学習能力、判断力の低下のため就労が困難) |
5級2号 | 神経障害のため、労務が制限されるもの(指示されたことができない、学習能力がないために就労が困難であるが、単純作業の軽易な労務であれば可能) |
7級4号 | 中程度の神経障害のため、労働能力が一般人よりも明らかに低下しているもの(一般の就労を維持することができるが、物忘れやミスが多く、一般人と同等の作業を行うことができない) |
9級10号 | 一般的な労働能力はあるが、神経障害のため、社会通念上就労可能な職種の範囲が制限されるもの(問題解決能力や判断力に障害が残り、作業効率や維持力に欠ける) |
高次脳機能障害とは症状の度合いによっては、上位等級を認定される障害です。症状の幅が広く、「CTRやCT」の画像所見が見られない場合は、12級、14級と認定されることがあります。場合によっては等級が認められない場合も多いのが現状です。
高次脳機能障害で後遺障害等級が認められるために
認定は書類だけで判断されるため、医師の診断書が最も判断基準に影響します。CTRやCTの画像の所見だけでは症状を明確に判断することができないため、日常でどのようなことが大変なのか、どのような症状が出ているのかを医師にメモなど書いてしっかりと伝えて、診断書を書いてもらうことが大切です。医師にも協力してもらい、診断書にしっかりと症状が出ていることを明記してもらいましょう。後遺障害等級を得ると賠償金が高額となるため、自分で申請を行うよりも、行政書士や弁護士に書類を代行してもらうことも検討することをおすすめします。
高次脳機能障害の賠償金
- 治療費(入通院費、交通費、雑費等)
- 休業補償
- 入院慰謝料
- 後遺障害逸失利益(後遺障害等級が認められた場合)
- 後遺障害慰謝料(後遺障害等級が認められた場合)
これらの賠償金の合計が保険会社から支払われます。後遺障害等級が高ければ賠償金が数千万円まで上がることも珍しくありません。もし等級が高いのあれば弁護士に相談して示談交渉を代行してもらうか、裁判で闘うことで賠償金が2倍まで上がる可能性があります。等級が認められていたら弁護士に相談してみましょう。