交通事故で遷延性意識障害と診断されたら、どのように治療を行っていくことになるのでしょうか?またそれによって認められる賠償金はどのように算定されるのでしょうか?
遷延性意識障害の特徴
遷延性意識障害は、重度のこん睡状態を指す症状のことをいいます。いわゆる植物状態といれるしょうじょうのことです。交通事故で脳に大きな負担が加わり、広範囲で損傷することにより発症します。こうなってしまうと生命維持は辛うじてできますが、広範囲の活動ができなくなってしまいます。
医学上、次の全ての条件を満たすものが遷延性意識障害に当たるとされています。
- (1)自力で移動できない
- (2)自力で食事飲物の摂取ができない
- (3)尿糞が失禁してしまう
- (4)眼で物の動きを追っても認識することができない
- (5)「手を握れ」「口を開けろ」などの簡単な命令には応じられても、それ以上の意思の疎通はできない
- (6)声は出しても意味のあることはいえない
- (7)以上の状態が3ヶ月以上続いている
遷延性意識障害の治療内容と回復期間
遷延性意識障害になってしまうと回復は不可能と思われがちですが、回復した例は以外に多いのです。日本では全国7箇所で遷延性意識障害の治療を専門的に行っている病院があり、30年間に1092人の患者を受け入れ、277人の回復実績が報告されています。このように、回復の見込みがないように思われる遷延性意識障害ですが、実際に回復してその後退院している人もいます。植物状態であっても、治療を行うことで回復の見込みはあるのです。回復期間は症状によって異なりますが、事故から5ヶ月で意識が戻り、8ヶ月目で退院してリハビリに移った患者もいます。
遷延性意識障害の後遺障害等級
遷延性意識障害と診断されると、第1級1号の後遺障害等級(最も高い等級)が認定されます。判断基準については、医学上の遷延性意識障害に当たること、MRIやCT画像の所見、日常生活状況報告の書面に基づき判断されます。
脊髄損傷の賠償金
- 治療費(入通院費、交通費、雑費等)
- 休業補償
- 入院慰謝料
- 後遺障害逸失利益
- 後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料で後遺障害等級が第1級1号と認められた場合、労働能力喪失率は100%となるため、逸失利益が高額となります。また後遺障害慰謝料も高額となるため、賠償金の総額は数千万円という額にまで膨れ上がるでしょう。こうなると、とても親族自ら示談交渉ができるレベルではありません。賠償金が高額になる場合は弁護士に示談交渉を代行してもらうか、もしくは裁判とすることが一般的です。後遺障害等級が認められているのであれば早急に弁護士に相談してみることをおすすめします。