交通事故の賠償金は、通常被害者側の保険会社に請求することになります。この場合は、保険会社が賠償金を払ってくれるため未払いの心配はありませんが、問題となるのは加害者が保険未加入の場合です。
保険未加入者の場合は、自賠責保険の限度額を超える部分は、直接加害者に請求することとなります。しかし、金額が大きくなると、加害者が支払いの滞りが起こることがあります。
自賠責の限度額
任意交渉 | ADR機関 | 調停・裁判 | |
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メリット | ・早期解決ができる ・厳格な立証が不要なケースがある ・両者が納得できれば気持ち良く解決することができる | ・裁判より早期解決ができる ・裁判基準の話し合いができる | ・裁判基準での適正な賠償額が認定される ・強制執行できる |
デメリット | ・両者が承諾しなければ解決できない ・どこかで妥協する必要もある ・後日トラブル発生の可能性あり | ・事案によっては長期化するおそれあり ・解決されない場合は裁判に移ることとなる | ・紛争の長期化 ・厳格な立証が必要 |
※自賠責は物損には適用されません。
そのような時に「強制執行(差し押さえ)」を行うことができます。
強制執行の手順
強制執行は、支払いが滞ったら自動的に行われるものではありません。強制執行をするにはしかるべき手順を踏む必要があります。
- 当事者同士で示談書の作成をする
- 被害者(債権者)が加害者(債務者)の財産を特定する
- 裁判所に申し立てる
当事者同士で示談書の作成をする
強制執行を行うには、まず当事者同士で示談成立を行わなくてはなりません。成立したら、示談書を公正証書にしておきます。こうしておけば、加害者(債務者)が示談書に違反をした時は裁判を起こさずに強制執行することができます。
しかし、当事者同士で示談成立ができない場合には、裁判を行う必要があります。裁判で賠償額を定め、それでも支払いが滞るようであれば強制執行することができます。
被害者(債権者)が加害者(債務者)の財産を特定する
強制執行する場合、債権者である被害者自身が、債務者である加害者の財産を特定しなければなりません。ここが一番の問題点となるのではないでしょうか。財産が特定できなければ取り押さえをすることも難しくなります。では、どのようなものが対象となるのでしょうか?
差し押さえの対象となる項目の例
- 土地、建物
- 骨董品、貴金属、現金(66万円までは差押え禁止)
- 給料、退職金
- 預貯金
裁判所に申し立てる
以上の項目が特定できたら裁判所に申し立てることで強制執行が行われます。債務名義が地方裁判所で作られたものであれば地方裁判所への申し立てとなり、簡易裁判所で作られたものについては,簡裁受付センターへの申し立てとなります。
ただし、問題となるのが、任意保険を加入していない加害者が、多くの財産を持っている可能性が少ないという点です。これを考えると、給料から差し押さえを行うのが現実的となります。
給料から差し押さえを行う方法
給料の差し押さえについては、債務者である加害者の勤務先が分かれば取り押さえることができます。給料・退職金等は、税金は社会保険料を控除した4分の1が差し押さえできます。それ以上差し押さえてしまうと加害者の生活が困難になるため、最低限生活ができる範囲で取り押さえていきます。
給料からの取り押さえ例
給料が30万の場合
税金等が6万だとしたら24万 × 25% = 6万の差し押さえ賠償金が1千万円の場合は約166ヶ月かかってしまうことになります。
これ以上に取り押さえられるものがあれば良いですが、もし給料以外に対象となるものがなければ長期間に渡り回収することとなります。賠償金がこれ以上となると全額回収することが難しくなるでしょう。ですが強制執行を行うことで少なからず回収を続けることができますので、もし加害者が保険未加入だった場合は、このような方的手段を使って回収していきましょう。
被害が大きく示談交渉がまとまらず裁判となる場合は、弁護士に相談してどのくらいの賠償金が見込めるか調べてもらうことをおすすめします。